top of page

 おいでよ!面影荘!! 第2話
 「人ならざるが集う場所・2」

「それじゃ今日もお疲れさまでした、また明日ー」
「お疲れさま、アンゼルム。明日もよろしくー」
 終了の挨拶と、それに応えるかのようなスタッフの声。
 仕事疲れなどなんのその、と言わんばかりの声音で、くすんだ金色の髪を持つ少年・アンゼルムは仕事場から足早で帰途についた。
 故郷の民謡を軽く口ずさみながら機嫌よさそうに歩くと、腰のベルトに下げた皮袋がその度に揺れる。
「さーって、今日はもうヒマだし、後は何してよっかな?」
 これからの、空いた時間の使い方に考えを巡らせながら、歩調は変えずに歩みを進めて、すれ違う人も含めて周りを見渡していく。その度に、まるで西部劇におけるガンマンの早撃ちのように皮袋に手を添え、ぴくぴくと指を反応させて。
 東京の電車における駅と駅との距離は、さして長くない。ゆっくり歩いて20分、足早にいけば10分かかるかどうか。それくらいの距離しかない。
 必要な物や、それを求める人間が狭い地域の中に集中し過ぎている為か、移動の手段を用意するなら、どうしても小刻みにならざるを得ないのだ。
「んー・・・、良さそうな相手があんまりいないなぁ。つまんないの」
 うっすらと存在感を消しながら歩道橋の手すりに腰かけ、店頭販売のミックスジュースを飲む。こうしないと不特定多数に見られてしまい、面倒だが騒がれるのだ。
 出来立て、というには少し時間が経ってしまった感じのものだが、それでも美味しくいただけるのは、果実の状態の良さか、はたまた、飲みやすいように作る企業努力故か。
 その状態のままに足をぶらぶらさせながら、腰元の皮袋の口を開ける。
 中に存在するのは、砂だ。どこからか持ってきたのかわからない、鼠色の小さな粒の砂。左手にジュースのカップを持ってストローで中身を吸いながら、右手に摘み取った砂をぽい、と橋の下に投げる。
 重力に従い落ちていく砂は、橋の下の歩道を通るスーツ姿の人間の目に入り込んだ。かと思うと、その人間は異物が入ったと擦る擦るわけでもなく、何事もないかのように歩いたままだ。
 ただその直後、日の落ちかけた街を歩いているというのに、大あくびを一つ。
 その欠伸につられるように、ほぼ同じタイミングで歩道橋の下の道路を歩いていた人たちは、あくびと眠気に襲われていた。
 二度、三度と投げると、その度に下を通る人間は眠気に襲われるが、しかしその場で眠るような人たちはいない。当然だろうなと思いながらも、自分の行為で人に眠気を与えようとしたことで、僅かばかりの不満を解消していた。
 その光景を見ながら、アンゼルムはちょっとだけ憂さが晴れたかのように、口に含んでいたミックスジュースを飲み込む。複数の果実と、それを繋ぎ合わせる為の蜂蜜の甘さが、舌から満足感を与えてくる。
「今日は夢の中でもう少し遊んでみようかな・・・、ん?」
 することも無い、と言わんばかりにぶらぶらと脚を振っていると、不意に振動が起こった事を感じ取り、携帯電話を確認するためにズボンのポケットの中へ手を突っ込む。表示画面には通話相手の名前と写真が写っていて、一目でわかってしまう。
 会話を開始する為、「通話」に向けてアイコンをフリック。直後に耳に添える。
「もしもしフランク? 何かあった?」

 * * *

 場所が変わり、アンゼルムに電話を掛けた男の方に目を向ける。
「あぁアンゼルム、あったと言うよりは、あるというかね。気になる事がね・・・?」
 本来は白いはずの肌はすっかり日に焼けて、シャツの下からでもわかる程に膨れ上がる筋肉が、普段から肉体を使う仕事に就いていることを教えてくる。
 大きな手には不釣り合いのように見える携帯を持って、細いキツネ目を困らせたようにしている。
 フランクリン・シモンズという名前の男は、停車した軽トラックの中で通話をしていた。
『何? 何か面白い事でもあった?』
「・・・そりゃまぁ、アンゼルムにとっては、かな?」
 多分ヒマでもしてたのだろう、とフランクは考える。そしてアンゼルムの食いつきから、それがほぼ間違いではないだろうことはなんとなしに理解した。
『ふぅん? だとしても、何か相談事なんだろう? 言ってごらんよ、聞いてあげるよ?』
「あぁ、えぇと実はね?」
 通話先のアンゼルムに促されるように、歯切れはやや悪いながらもフランクは話し始める。
「アンゼルムは、ボクの取引先の女性を知ってるかい?」
『え? えーと女性って・・・、年はどれくらい? それと人間だったりする?』
「年は多分若いと思う。人間じゃなくて、死神だね」
『え、死神? ってことはあの人か! あ、人じゃないや』
 一応、自分の知り合いという事で彼女にもアンゼルムの事は伝えてある。その時はただ単純に、自分の知り合いという事だけではあるが。
 その時のラーメンには、自分が卸している野菜を大量にトッピングした上で頼んでいた記憶も、いい思い出だ。
「そう、彼女なんだよ。でね・・・」
『そーんーでー? なんだよフランク、ハッキリしないなぁ』
「あぁ、うん、確かにね」
 電話越しからも、少しずつイライラが増しているような口調になっている。これ以上内容を伝えないと、アンゼルムはしばらくヘソを曲げてしまいかねない。
 少しだけ息を吸い、心臓を急かせる不安を落ち着かせて、ちゃんと伝え始める。
「実はその彼女なんだけど、急遽引っ越すことになってね。連絡先が変わるって事を、さっき伝えられたんだ」
『ふぅん? だとすると、フランクに何か不都合でもあったりするの?』
「ボクに不都合、というか・・・。アンゼルムがいるから好都合というか。面影荘っていう場所なんだ。知ってるよね?」
『なんとまぁ。勿論、あそこの事は知ってるよ』
 喜んだような驚いたような声が聞こえてくる。
 フランクの知る限り、アンゼルムはそこの住人と知り合って日本に渡ってきた、という事を昔に聞いた事がある。だからこそ、というべきか。
『それでオイラにどうして欲しいんだい、フランク?』
「・・・出来る事なら、君が知ってる面影荘の誰かに、連絡を取ってほしいんだ」
 気になる事を確かめる為に、必要な事の繋ぎを、友人に頼む。

 * * *

 千代田区、神田明神。日が傾いてきた時間帯でも、昼間よりは少ないがまだまだ人が沢山来ている場所。
 賽銭箱の前に、一人の子供が立っていた。
 黒いショートカットに、ハーフパンツと黒のタイツ。上着にしているジャケットも同じく黒と、ほぼ一色にまとめられた服を着ている。
 アクセントと言えるのは、赤と黒の紐で縒り合されたウォレットチェーンと、その根元についている金野鈴。佇まいを直すのに合わせて、ちりんと小さく音が鳴る。
 丸くしっかりした瞳は、まつ毛もその存在を含めて大きく見える。一見して少年のような、しかし見方を変えれば少女のような、不思議な子だった。
「ていっ」
 目の前の賽銭箱へ、五円玉を投げ入れる。
 コトン、チャリン。
 箱を構成する木にぶつかる音と、その中に蓄積されている大量の硬貨の山に乗っかった音がするのを確認すると、鈴を鳴らす。
 深く二礼、二拍手、一礼。
「・・・・・・」
 そうして心の中で、その神社の祭神に向けて感謝をする。
 よし、と頭を上げると、踵を返して神社の敷地外へ出る前に、鳥居に向かってもう一度礼。後ろから感じる狛犬の視線には、疎ましさと羨ましさをちょっとだけ感じる。
「よーし、今日のお礼終了ー。新しい人が来る前に戻んないとね」
 神社という空気にも委縮した感じは見られず、大通りを通って坂を下り、帰ろうとした時にその子は気付いた。友達からの連絡だ。
 LINEを使っての簡単な、思い切り他愛の無いもの。
【やっほースバル。
 今ちょっと良い?】
 名前の表示には、アンゼルムとある。自分が住んでるアパートの住人がこちらの存在を伝え、それによって日本に着いてきた相手。
 住人になれなかったことは残念だったけど、それでも楽しい友達として付き合いがある相手だ。
 その子供、駒形スバルは坂を下りた所のコンビニで一度立ち止まり、返答を返していく。
【良いよー。もう今日のお参りは終わったしね】
 すぐ既読が付いた。当然のように、すぐ返事が返ってくる。
【フランクから繋ぎを頼まれちゃってさ。
 スバルから、面影荘の管理人に会えないか聞いてくれない?】
「フランクから? 何かあったのかな・・・」
 もちろん、その名前も知っている。アンゼルムの知り合いで、畑仕事をしている男だ。ずいぶんと体格が良くて、一緒に寝たら夏は辛そうだと考えた記憶がある。
 当然のことながら、スバルも住んでいる面影荘の管理人は、大家も含めてちょっと問題のある存在だ。大事になる前でどこかで止めておく必要がある。今回は自分がそうなるのかな、と思いながらも、手を進めて返信を打ち込む。
【何かあったの?】
【面影荘に今日入居する相手の事で、フランクが不安になっててね】
【特別問題になるような事は無いでしょ。
 ダグラスと同室でも、何かすると思えないし】
 帰ってきたのは、驚きを表すようなスタンプだ。これは面白そうだ、後で買っておこう。
 次いで再度アンゼルムからのLINEが来る。
【なるほど、男性と同居か。そりゃ不安になるわけだ】
【だからウチの管理人に、「その辺気にしてほしい」って直に言いたいの?】
【かもね】
 短い言葉の後に、続けて言葉が送信される。
【詳しい事は解らないけど、とりあえず直接会って話したいんだって。
 だから、繋ぎ取ってほしいんだ】
 今度は「Please!」と言う文字とキャラの描かれたスタンプが送られる。
「・・・なるほど。見定めたいのかな、ウチの事」
 スバル自身、自分が今籍を置いているアパートの存在を軽く見ている訳ではない。
 一つ間違えば、人間と人外の間に存在しているバランスを崩しそうな状態の上に成り立っている面影荘に、知合いをホイと預けられるかと考えれば、そりゃ難しいだろう。
 だから、そこを纏めている存在を知りたいのだろう。
 すっと指を動かし、「OK!」と表示されたスタンプを送る。続いてセリフを。
【そんじゃ管理人を行かせるね。春那さんは多分、歓迎会で動けないから。
 決まったら後で連絡するよ】
【うーぃ】
 その返事を最後に、LINEは止まった。
「さて、そしたら今度は・・・」
 ズボンのポケットに手を突っ込み、緑色の袋に包まれた小さなお守りを取り出す。今度は携帯でなくそこに向かって声をかけた。
「ヨシノさん、晃太って今どんな状態?」

 * * *

「あー・・・、面倒だった・・・」
 転居手続きを終えて、石神晃太は市役所の駐車場に出ていた。確かに手続き自体はすぐに終わったが、今度は外に出る為にも面倒なルートを通らねばならなかった。
 ポールを足を使わずに腕力だけで登らねばならず4階へ。その穴を通って直下の3階へ降りて、降りる為の階段の3段目を4回踏んでから2階に降り、トイレの手洗い場を用いて清めた手で3つの無人オフィスへ繋がる扉を開け、その先にある階段を1秒ごとに1段踏んで、ようやく1階に辿り着いた。
 一度でも間違うと最初に戻されるため、慎重にやらざるを得なかった。
「今度からは侵入者排除用のルートじゃなくて、直通の通行証を発行してもらわないと・・・」
 人外の世界は、何も知らない人間がそこに触れないよう、基本的にひた隠しにされている。
 だからこそ、執拗なまでに面倒なルートを通らなければ目的の場所に辿り着けないような、一種の結界が張られている。
 知っている人間や、通っても問題ない人外達には、このルートを通る必要のない通行証が用意されることもある。今度はそれを使わないと、無駄に時間が取られてしまうだろう。
 自分が忌乃家の存在であることを、今日役所の存在に告げたのだから、申請も簡単に通るだろう。
《もし、石神さん?》
「ヨシノさん? ちょっと待っててください、えぇと・・・」
 ポケットの中から、くぐもった声が聞こえてきたのに気付き、晃太はすぐに音源を取り出した。
 緑色の袋に包まれた小さなお守りからそれは聞こえて、取り出されたと気付いたら、お守りから声の主の姿が現れる。
 揺らぐように小さな姿で現れたのは、濃いめの琥珀色の着物に身を包んだ、傍目には60歳はいってるであろう老年の女性だ。色の抜けた長い髪と、目尻や口元には、隠しようのない皺が年輪のように、しかし優しい形で刻まれている。
 ヨシノと呼ばれたこの老女は、優しげな見た目に違わぬ声で晃太に語り掛けてきた。
《先ほどスバルさんから、晃太さんへ言伝を預かりまして。ご用が終わったので、お声を掛けようかと思いました》
「確かにLINEもありましたんで知ってました。お気遣いどうも・・・」

 用事がある事は面影荘の全員に伝えておいた。当然スバルにも。だからこそ、LINEである程度の事前連絡を入れておいて、さらにヨシノさんを使って直接言伝をする。

 手間がかかって面倒かもしれないが、面影荘全体に関わる事であるのなら、こんな手段を用いられるようになっていったのだ。

「それで、スバルくんはあんて?」
《えぇと、確か・・・。「ヨシノさんから連絡貰ったら、すぐLINEしてー」・・・とのことです》
「いやあの、口調とか真似しなくていいですからね? ヨシノさん?」
《そうでしたか・・・》
 あまり似てないスバルの真似を見て、どう反応して良いのかわからなくなる。少しだけ消沈されると、なおのことだ。
「あ、いえ、その、連絡ありがとうございます、ヨシノさん。スバルくんには俺から連絡しておきますね」
《はい。では、きちんとお伝えしましたよ》
 すぅ、と出てきた時と逆回しのように、ヨシノの姿は消えていった。
 面影荘としての大黒柱である彼女だが、こうしてお守りを介して現れる事もある。たまにこんな伝言役の立場にされることもあるが、それでも彼女は頼られていることが嬉しいのだ。
 そうすることしかできないと解っているからだろうか、それとも、こうして繋げていることが、自らの役割だと実感しているからだろうか。
「・・・あぁいや、今気にすることじゃないよな、これは」
 駐車場の一角に存在する、二輪車用の場所に向かいながら、晃太はスバルの携帯に向けて発信する。
 これ以上の用事があるのなら、場合によっては家に帰るのは日付が変わってからになりそうだ。

 * * *

 ここから先は、一つの余談になる。

 ある場所の銭湯。後継者をどうしようかと悩んでいる老人が経営している、小さな所だ。
 そこの脱衣所で、1人の女性が熱気にやられた頭と体を落ち着けるように、長椅子の上で横になっている。
「うあぁ~・・・、のぼせちゃったわ、これ・・・」
 入浴で濡れた黒髪は、おかっぱのように短く切り揃えられている。熱気で赤くなった肌は、もとはそれなりに白かったのだろう。
 どうやら長湯をした影響で、今はこの有様だ。その原因と言えば、
「おかしい・・・、今日この銭湯に来れば、知らない世界を見せてくれる誰かに会える、って出てたんだけどなぁ・・・」
 彼女は今日の占いで出ていた結果を思い返す。
 純粋に興味だけで行った占いは、かなりと言っていい的中率を誇るのだが、今回はどうにも外れたような気がしてならない。
 大きな扇風機の風を独り占めしながら、ぼぅと考えていると、ふと額から目元にかけて冷たいタオルが乗せられた。
「あひゃ~・・・、気持ちいぃ~・・・」
「何を躍起になったのかは知らないけど、そんなになるまで入ってるのはやり過ぎじゃない?」
「はい・・・、面目次第もありません・・・」
 ぼぅとした意識の中で、タオルをかけてくれた女性に向けて声をかける。目元まで隠されているタオルの隙間からほんのりと見えるのは、もう服を着ているようだがそれでもわかる、女の自分よりさらに白い肌と、羨ましくなるようなスタイルの持ち主だった。
「少し体を冷やしたら、これを飲みなさいな。けれどあまり冷し過ぎないようにね」
「はい・・・、ありがとうございます・・・」
 頭の近くに何かが置かれたような気がする。ちょっと柔らかく、それでいて詰まった音がする。多分ペットボトルだろう。彼女はそう考える。
「それじゃあお先に失礼するわね。体には気をつけなさいね」
 すっと立ち上がり、脱衣所の出口へと向かっていく声の主。慌てて彼女は起き上がり、せめて姿だけでも見ようとしたら、額に乗せられたタオルが、その中に挟まれていたものごと落ちる。
 その中身を見て、彼女は少しだけ目を丸くした。
「・・・これ、氷? って、これどこから出てきたの? えぇぇ・・・?」
 冷蔵庫で作ったにしては不思議と薄い、そして「タオルに挟むために作りました」と言わんばかりに、畳まれたタオルの形にジャストフィットした形。
 あまりにも違和感しか出てこない代物を目の前にして、少しだけ思考力が戻って来た頭で、彼女は理解する。
「タイミング、逃した・・・!!」
 悔しさに歯噛みする彼女は気付いていない。
 こうして自分がのぼせなければ、今こうして近い所まで来ていたもののすれ違った彼女とは、“ただの客同士”という、今より遠い形でしかすれ違えなかったのだと。

 銭湯を出た女性の方は、しかし湯気の立たない状態ながら、ふぅと息を吐いていた。
 風呂から上がったばかり、というには赤味の薄い白い肌と、僅かに水気を含んだままきらきらと光る薄青色の髪。入浴後の着替えとして持ってきていた服は、普段来ている物とは違う薄手のTシャツとスラックスだが、シンプルな姿故に彼女のスタイルの良さが際立っている。
「ふぅ・・・。日本に帰ってくると、やっぱり銭湯に来たくなるわね」
 満足げに頷きながら、女性は自らの手と腕を確かめるように見る。
 浄水され、消毒された事で違和感は少しだけあるけれど、それでも故郷の水というのは体になじむ物だ。これが国という大きな枠でなく、郷というもう少し小さい枠だったらもっと馴染むのだろうけど。
 旅の疲れはある程度は癒えてきた。後は土産を渡すために、自分の寝床に戻らないと。
「そういえば今日は、新しい人が来るんだったかしら。・・・早く戻っていればよかったかも」
 少しだけ銭湯に寄り道したことを悔やみながら、しかしこれで良いかとも考える。
「・・・うん。第一印象が大事よね。帰ってきてくたびれた姿なんて、見せられたものじゃないわ」
 考えるのはそんな事。けれど本人としては、それが大事なのである。
 少なからず自らの姿に自信を持っているのなら、妥協できるラインは低くないのだ。
「後は何か着替えを・・・。服は今から洗濯して間に合うかしらね」
 このままの服装では帰れない。そう考えた彼女は、先ほどまで着ていた服をもう一度着れるように洗濯する為、銭湯の横にあるコインランドリーに入った。

 その洗濯の最中、のぼせていた彼女は慌てて外に出ていき、どこかに行ったであろう女性を探しに追いかけていった。
 もっとも探し人である女性は、すぐ隣にいた訳ではあるが。
 この2人の再開は、もう少し後のことになる。

 3話につづく。

bottom of page